席を彩るお料理の主役達・食材ご紹介

魚　Vol.02


春子鯛（かすごだい）・正式には「真鯛」と「血鯛」（ちだい）の当歳魚を総称した呼名で、市場に出回るのは１５㎝前後のもので、「小鯛」という名で売られている。上の写真は血鯛だが、一般的には「はなだい」と呼ばれている。真鯛と血鯛の違いは、背びれの３番目と４番目の棘の先端部が伸びており、尾びれの後縁が黒くならない。また、真鯛に比べると小さく大きくても45㎝ほどである。寿司種の「春子」は非常に美味で、江戸前寿司には、「子肌」と共になくてはならないものである。日本海側で見かける「小鯛の笹漬け」を代表とした、酢との相性は最高で、塩焼きや刺身も美味だが身は真鯛より水っぽい感がある。しかし、真鯛の味が落ちる頃が旬となる為、その時期は高値で売られている。	雨子（あまご）・四国から静岡県の伊豆半島までの上流河川に生息し、サケのように海に降りて再び戻ってくるものを「サツキマス」と呼んでおり、体色や体形はサケに類似しているが、海へ降りないものは黒っぽい楕円形の模様に鮮やかな朱色の斑点を持つ美しい体色をしている。同種に「ヤマメ」と言う魚が存在するが、これも海に降りるものを「サクラマス」と呼び、「サツキマス」同様サケに類似した体色と体形を持つ。（「桜鱒」の解説を参照）過去、サクラマスとサツキマスは別種とされてきたが、近年同種ということが判明し「サツキマス」及び「アマゴ」は、種としては「サクラマス」の仲間となる。四国では雨の魚と言う意味で、「あめご」と呼ぶ。焼いた石を使った「味噌焼き」が特に格別だが、香りはそれほど強くはないが、「アユ」同様に、塩焼きのうまさは最高のものである。最近は養殖ものが多く市場に流通している。旬は春から初夏にかけて。

素魚（しろうお）・体が半透明であることから「しろうお」と呼ばれているが、よく混同される「しらうお」とはまったくの別種の魚である。「しろうお」は、ハゼ科で「しらうお」は、しらうお科というサケの仲間である。北陸や山陰などで、「またいさぎ」の地方名を持つが、琵琶湖の「いさぎ」とはこれまた別種である。成長しても６ｃｍほどの小魚で、体は白っぽい半透明でうろこは無い。生きている時は、赤黄色がかった内臓と体節が見えるが、死ぬと白くなる。左右に平たい頭とハゼ科特有の吸盤状の腹びれを持っている。背びれは１つで中央より後方に付いているのが特徴。「踊り食い」が知られているが、これは死後急速に味が落ちる為で、活魚でないと商品価値が無い。弱い魚であるので酸素を注入した袋に詰められたまま輸送され、この状態で市場に並ぶ。産地で有名なのは福岡近郊の室見川で、旬は春で市場に出回るのは２月から５月にかけて。（素魚の踊り喰いはこちら）	鰤（ぶり）・成長するにつれて呼称が変わる「出世魚」なので、縁起が良い魚と言われ、地方によっては正月肴や祝儀肴として定着し現在に至っている。呼名は地方によって異なるが、関東では15㎝くらいまでの幼魚を「わかし」、40cm前後の2～3年魚を「いなだ」、60cm前後の4年魚を「わらさ」、それ以上を「ぶり」と呼ぶ。関西では、15cm以下を「わかな」、20cm前後を「つばす」40 cm前後を「はまち」、60cm前後を「めじろ」、それ以上を「ぶり」と呼ぶ。成魚の大型は約1mに達し、体重は10㎏を超え、背は暗緑色で、体側に黄色の縦縞が1本走っている。非常に見た目の似た魚で「ひらまさ」という魚がいるが、一番明確な見分け方は、上部写真の赤丸印の部分を見るとおり、「ぶり」の上あご主骨の後上角は角ばっているのに対して、「ひらまさ」のそれは丸みがある。（「平政」の解説を参照）（「間八」の解説を参照）体色やヒレ等でも見分けが付く場合もあるが、非常に微妙だが、身の味や食感については、どちらも美味だか全く異なる。脂がのるのは東京でいう「わらさ」より少し大きくなるくらいからで、成魚になると脂が十分にのって非常に美味しくなる。特に真冬に捕れるものは「寒ぶり」と呼ばれ、最高に味が良い。

間八（かんぱち）・「ぶり」や「ひらまさ」と同様の高級魚で見た目も非常に似ているが、頭から目の上にかけて（上写真）黒い帯状の模様があり、「ぶり」や「ひらまさ」に比べて体高があり、上あごが発達し、後端が目の下まであるので、案外見分けは用意である。（「鰤」の解説を参照）（「平政」の解説を参照）体長は１m以上に達するものもいるが、あまり大型のものは、食用としてはあまり向かない。世界中の温・熱帯域に棲息するフィッシュイーター（肉食魚）で、寿司・和食の世界ではなくてはならない魚である。天然物は季節を問わずに値段が高い為、早くから養殖され市場で見かけるほとんどが養殖ものである。養殖ものはやはり脂が多く、身も柔らかく、天然物とははっきりと区別することができる。関東では秋口に黒潮にのって「汐っ子」（しょっこ）と呼ばれる幼魚を季節ものとして食す習慣があったが、近年ではあまり見かけることが無い。釣人の間では人気の魚種で、伊豆半島や七島・九州などで盛んである。ルアー疑似バリを使ったり、「ムロアジ」を付けた泳がせ釣り等海の大物として格好のターゲットとなっている。刺身・焼き物・煮物・フライ等何でも美味しくいただける。旬は夏から秋にかけて。	飛魚（とびうお）・暖海性の魚で、文字どおり空中を飛ぶところからこの名があり、海上で２００m近く滑空するときもある。また、時には沖を走る船に飛び込んでくるものもある。とびうおの仲間は種類が多いが、食用としての主なものには「とびうお」・「はまとびうお」・「つくしとびうお」・「ほそとびうお」などがある。市場ではこれらは特に区別されてはいないが、東京市場では入荷の時期により、「春とび」・「夏とび」と呼び分けている。「春とび」は、２～３月頃から入荷する八丈島の「はまとびうお」を指し、特に出始めの地元の刺し網漁で揚がるものは最上とされ、初夏から出回る「とびうお」などの「夏とび」に比べると６～７倍の高値がつけられる。「とびうお」は、初夏から秋に出回り、旬は初秋。「はまとびうお」は、冬～春が旬。「つくしとびうお」は、初夏～秋に出回り、旬は初夏。「ほそとびうお」は、晩春～秋に出回り、旬は晩春。

鮎（あゆ）・富渓流に身を躍らせる美しい姿と、独特の香りと品の良い淡白な味、さらには北海道の石狩川から南の殆ど日本全国の河川に生息することもあり、一番代表的な日本の淡水魚となっている。釣りの世界でも、鮎の主食である藻を確保するために縄張りを持つ為、そこに侵入するアユを攻撃する習性を利用した友釣りが特に有名である秋に川で孵化した稚魚は海に降り、春に再び川を遡って中流域で成長し、秋になると下流に降りて産卵し、やがては短い一年の命を終える。このことから年魚（ねんぎょ）とも呼ばれるが、稀に雌に限り例外的に越冬するものがあり、これを「とまりあゆ」と呼んでいる。香魚（こうぎょ）と呼ばれるように、独特と香りが身上で、これを生かすには塩焼きが一番。「若鮎」は身の柔かさと淡白さを生かして「背越し」や「洗い」にする。「落ちあゆ」は、脂が抜け、皮も硬いので「魚田（ぎょでん）」や「煮浸し」などに向く。鮎の塩辛を「うるか」と呼び、内蔵・卵巣・精巣など様々あり、珍味として、また和え物などに良い。（天然鮎の塩焼きはこちら）	石垣鯛（いしがきだい）・「石鯛（イシダイ）」の仲間で、幻の魚として磯釣りの対象魚としてイシダイと共に非常に人気のある魚である。皮目にある黒い斑紋が石垣模様に見える為、この名が付いたとされ、家の石垣を造ると言う意味から釣れると縁起の良い魚とも言われている。市場に出回る量は少なく、稀に活魚が他の魚に混じって入荷する程度である。体形はイシダイ同様に著しく側偏し、体高が非常に高い。体の割りには口は小さく、くちばし状で多数の歯が層のように並び、ウニ・サザエ・ふじつぼ・等の底生または、付着性の動物や海藻等を割ったり噛み砕いて捕食する。黒褐色の斑紋が体全体にあり、口の部分は黒いが、雄の老成魚は非常に大型化し、体色もほぼ黒になり、口だけが白くなり、これを「口白（くちじろ）」と呼ぶ。雌は成魚になっても大型化はするが、体色は変化しない。市場に出回るものは５０㎝前後のものが多いが、磯釣りでは、８０㎝を超える大物も出現する。旬は夏。量は多くないが、晩春から秋にかけてが出回る時期。味は「イシダイ」より若干クセがあり、好みが分かれるところ。身は引き締まっていて食感が良い。（「石鯛」の解説を参照）

真鯵（まあじ）・日本で最も馴染みの深い魚と言っても過言ではない、誰でも知っている魚で、年間を通じて市場に出回る。水深の浅い運河や港内から、水深150メートルほどの深さの海まで日本全国に広く棲息している。アジ科の魚は紡錘形か体高が高い体形で、尾びれの手前に独立した2本のトゲがあり、側線上に「ぜいご」と呼ばれるトゲのある大型のうろこを持つ。また、非常に種類が多く、日本近海だけでも20種近く生息するが、通常「アジ」と言えば「真鯵」を指す。値は１㎏500円ほどのものから5000円を超えるものまで幅広く、捕獲方法や産地等によって変動する。上記写真は、「関あじ」と言われるもので、豊後水道の複雑で早い海流にもまれた地つきのものを釣り上げ、一定期間畜養し、締めて出荷する。値ははるが、型が大きく、身の締り、味、どれを取っても非常に美味である。しかし、市場などで偽物が横行しているので注意が必要。初夏から秋にかけてが旬であるが年間を通じて食すことができ、「たたき」・「刺身」・「干物」は勿論のこと、千葉の外房名物の切り身を青じそ、ネギ、しょうがにみそを加えて包丁で細かくたたく、「なめろう」は、酒肴にご飯に最高の一品となる。	白鱚（しろぎす）・前回の「鯵」と同様に馴染みの深い魚で、通常「きす」と言えばこの「しろぎす」を指す。「きす」の仲間は多いが、「しろぎす」が最も味が良く、釣りの世界でも「投げ釣り」の対象魚として親しまれている。同じ仲間の「あおぎす」は、「しろぎす」よりも明らかに大型で、体色が青味を帯びており綺麗な魚だが、味は臭みがあって劣る。但し、釣りの世界では干潟が激減していく昨今、九州方面の一部地域で稀に釣ることのできる幻の魚となっている。生息地は、北海道南部以南でほぼ日本全国の湾内の砂地に棲息している。体色は綺麗な真珠のような色で、体長は最大で30㎝ほど。一般的に出回るのは15～20ｃｍほどのもの。体形は円筒形で胸ビレが頭のすぐ後ろにあるのが特徴。肉質は白身で味は癖がなく淡白で非常に美味である。一番一般的なのは塩焼きで、皮目にやや香りがある。また、新鮮なものは刺身で繊細で爽やかな味わいを楽しむことができる。旬は初夏から夏にかけて。

青羽太（あおはた）・日本の近海には１００種類以上のハタの仲間が生息しており、「アオハタ」は本州中部以南の各地沿岸域のやや深い岩礁地域や砂泥地域に広く生息している。（「赤羽太」（あかはた）の解説を参照）（「雉羽太」（きじはた）の解説を参照）若魚は、磯場や堤防などの意外と岸近くの浅場でも捕獲されることがある。体色は黄褐色で、６条の幅広い暗色横帯があり、黄色の小さな斑点が多数散在する。また、大きな特徴としては、尾びれの後縁が黄色い。体長は20cm～40cmと、ハタの仲間としては小型のものが多いが、成魚は90cmほどまで成長する。食性は、甲殻類や小型の魚を捕食する。ハタの仲間としては、市場では意外と入荷の多く、主に日本海側から入荷する。白身の上品な味で、脂も甘味もあって他の高級ハタ類に負けない味である。刺身は勿論、蒸し物、ムニエル、グリル、煮つけ等にも向く。旬は夏.。	赤連子（あかれんこ）・通称「れんこだい」と呼ばれ、「きだい」にやや似ており、その代用として鮮魚・冷凍もので出回っている。２００カイリ規制が始まってから一時急に大量に市場に出回った魚だが、かなり以前より市場には時々出回っており、当時は「きだい」と区別されずに扱われることが多かったようである。体長は30㎝ぐらいまで成長し、タイ科特有の美しい体色と体形をしている。「きだい」に多少似ているものの、体色は全体的に赤みが強く、胸びれのつけ根の内側が濃黄色をしているので「きだい」と判別することはそれほど難しくはない。小笠原等で釣りによる捕獲が多いので、東京市場には鮮度も姿も良いものが入荷する。塩焼きが美味で特に皮目の香りは非常に良い。

白曹以（しろそい）・「カサゴ」、「メヌケ」、「メバル」と同じフサカサゴ科の魚で、外見も「カサゴ」などに非常に良く似ている。上の写真は「シロソイ」だが、他にも「マソイ」、「クロソイ」、「シマソイ」、「ムラソイ」等の近種が存在する。市場に出る量は、一般的に少ないが、沖の根魚釣りとして非常に人気があり、味の良い白身魚として知られる。「ソイ」は卵胎生の魚で、稚魚を生む春から初夏にかけてが旬。通年捕ることができるが、秋から冬でも脂がのって非常に美味である。刺し網やはえ網で多少は捕獲されるものの、海中の根周りに生息するため捕獲量は非常に少なく、もっぱら釣りの対象となっている。	真鯖（まさば）・毎年100万トン以上の水揚げがある多獲魚で、古くから日本人に馴染みの深い大衆魚の一つである。「鯖の生き腐れ」と言われるほど傷みが早く、すぐに身が柔らかくなってしまう。これは、鯖自体が持つ分解酵素が強く、自身で消化してしまう為で、普通は塩や酢で〆たり、すぐに調理して腐敗を防ぐ。鯖を食べると蕁麻疹が出る人が意外に多いが、これも鮮度と大きく関係している。一般的に、青い魚は「ヒスチジン」と言う物質が多く身に含まれており、魚が死ぬと細菌の作用でこれが「ヒスタミン」に変化し、アレルギー症状を起こす。例えば、黒鯛（クロダイ）と比較して鯖の持つ「ヒスチジン」の量は、約100倍にもなる。市場に出回るのは、３０～４０cmの大きさのものが多く、脂ののったものは特に美味で、代表的は青背の赤身魚である。通常エサの多い近海に生息し、産卵が終わる頃から猛烈な食欲を示し始め、秋から冬にかけて脂がのってくる。これが俗に言う「秋鯖」である。（〆鯖はこちら）

秋刀魚（さんま）・「秋刀魚」と書いて「さんま」と読ませるのは、その姿形と季節を魚にピタリと表現した当て字である。「さんま」とは元々、大きな群れと言う意味の”沢”の字と魚を意味する”ま”の字とを結びつけた群魚と言う意味で「さわんま」と呼ばれていた。秋から獲れ始め、普通は年内に取れたものは「新さんま」と呼ばれる。年を越してからのものは冷凍されて市場に通年出回るが、かつては大量に捕れたものを保存する方法が各地で工夫されていた。長野の「塩さんま」や岐阜のさんまとまつたけを炊き込んだ「茶飯」などがそれにあたり、加工保存して内陸に運んだものと思われる。体が細く、背びれ・腹びれ・尾びれが後方にまとまって付いており、背中は青黒く、腹部は銀白色で金属のような光沢があり、また体長が３５㎝～４０cmと「短刀」に似ている為、九寸五分（匕首：あいくち）という物騒な異名を持っている。鮮度の良いものは、上部写真のように下あごの先端が黄色く、しっぽを持って頭を下に向けるとまさに刀のようである。	鱧（はも）・「はも」は、古語の食む（はむ）・咬む（かむ）からきている。確かにその生命は強く、切り落とされた頭部だけになっても咬みつくとさえ言われ、少しでも水分があればかなりの長時間生き続けることができる。海の中でも猛魚ぶりを発揮し、エビ・カニやイカ・タコから小魚まで食べる典型的な肉食性の魚である。体形は細長く、「うなぎ」や「うつぼ」に似ている。鋭く尖った歯が数列生えており、口は完全には閉じられず、いつも大きく開いたままになっている。深さ５０～６０mの岩礁やサンゴ礁近くの砂泥の中に生息し、背は淡い褐色で全身に強いぬめりがあり体長は約２m程まで成長する大型の円筒魚である。身は、白身で味は淡白で、非常に美味だが小骨が多く、皮の際まで伸びているので必ず「骨切り」をしなければならない。関西では家庭料理にも使うほどなじみが深く、特に京都では古くから好まれており、代表的な夏の味の一つである。

伊佐木（いさき）・夏を代表する魚といえば、まず第一に「鱸（すずき）」があげられるが、「すずき」が高級魚であるのに対して、大衆魚の代表格ともいえるのがこの「いさき」である。日本の本州中部以南から遠くは南シナ海まで生息する暖海性の魚で、海藻の多い岩礁地帯に多く住んでいる。夏磯の釣りのターゲットとしても人気がある。ひれの棘と骨が非常に硬くて鋭く、食べている際にのどに刺さると大変な目に合う。しかし、味は癖のない淡白な味で、磯魚特有の香りが少しある。大型のものは刺身にすると甘味も多く、特に美味。	河豚（ふぐ）・日本でふぐを食べ始めたのは縄文時代だが、中毒死する人が多かった為に、江戸時代には禁止令が出された事さえあり、明治２５年には法律による取り締り規制が行われている。現在では毒を持つ部位やその毒性がほとんど解明されているが、取り扱いについては、食品衛生法を中心に細かく規制され、残滓（ざんし）の処理も厳重に管理される。ふぐの仲間で主に食されるものとしては、マフグ・ショウサイフグシマフグ・ゴマフグ・トラフグあたりが有名。マフグとショウサイフグは非常に似ており、北海道などから大量に入荷し、安いふぐ料理は大体これである。皮に強い毒を持ったものが多いが、シマフグとトラフグは唯一皮も食べられる。上記写真は、ふぐの中でも最高級品とされる「とらふぐ」で、大型で体長７０㎝ほどにもなる。体の上半分は暗褐色で虎のような黒い模様があり、胸ビレの後に大きな黒い紋があるのが特徴。性質は非常に荒く、時には共食いすることもあるほど。しかし、身は透明感のある白身で生臭みはなく非常に美味。（河豚刺し小皿はこちら）（河豚刺し大皿はこちら）

笠子（かさご）・北海道南部以南から東シナ海までの浅めの岩礁地帯を中心に広く生息している。本種の仲間はとても多く、「××カサゴ」といった名の種類が数多く存在するが、また見極めも結構難しい。（「鬼笠子」の解説を参照）呼名も地方によって違い、九州では「アラカブ」・近畿四国では「ガシラ」と呼ぶ。出張などで料理店に入った時に覚えておくと便利である。日本人には結構馴染みのある根魚で市場には年間を通して入荷するが高価である。味が良く高価な魚なので、釣り人にも人気があり、岩礁を見つけて探る船釣りは勿論、堤防周辺の根周りやテトラポッドの隙間など、障害物を狙うと意外と簡単に釣ることができる。「カサゴ」は卵胎生なので産卵期の初春に釣ると、お腹に小さな子供を身ごもっている。皮を付けたままの刺身が最高に美味で、他には「ぶつ切り」にした身を使った「みそ汁」も濃厚な味で最高。煮つけや小振りなものは唐揚げでも美味しい。	鱸（すずき）・日本各地の湾内に多く生息し、淡水の川にも遡上する。場所は、真水と海水が入り混ざった河口域などに多く見られる。東京湾などの湾奥、東京湾に繋がる河川や京浜地帯の運河等にも多く生息し、釣りの世界では最近はシーバスと呼ばれ、ルアーフィッシングの対象魚としても人気がある。（「平鱸」ひらすずきの解説を参照）夏魚の代表格で良質の白身魚として高値で取り扱われ、東京市場では、両国の川開きの時期に特に値が高くなると言われる。特に関東近県の内湾や河川で捕れたものは、時期や場所によって臭みがあるが、氷で強めに締めれば全く臭みを感じなくなる。夏の「スズキの洗い」は夏には欠かすことのできない一品だが、最も寒くなる２～３月の大型は特に美味で、香り・食感・味、共に絶品である。活け物の刺身は勿論、ポワレやムニエルも非常に良く合い、最近では和食店よりもフレンチ・イタリアンレストランへの出荷が多いようである。「すずき」は「ぶり」等と同様に成長時期によって呼び名が変わる出世魚とよばれ、一般に２５ｃｍ前後の一年魚を「せいご」と呼び、３０ｃｍ～６０ｃｍぐらいまでを「ふっこ」、それ以上を「すずき」というように呼び分ける。また、さらに５～６ｃｍのものを「こっぱ」とも言うようである。（「あら」の解説を参照）


春子鯛（かすごだい）・正式には「真鯛」と「血鯛」（ちだい）の当歳魚を総称した呼名で、市場に出回るのは１５㎝前後のもので、「小鯛」という名で売られている。上の写真は血鯛だが、一般的には「はなだい」と呼ばれている。真鯛と血鯛の違いは、背びれの３番目と４番目の棘の先端部が伸びており、尾びれの後縁が黒くならない。また、真鯛に比べると小さく大きくても45㎝ほどである。寿司種の「春子」は非常に美味で、江戸前寿司には、「子肌」と共になくてはならないものである。日本海側で見かける「小鯛の笹漬け」を代表とした、酢との相性は最高で、塩焼きや刺身も美味だが身は真鯛より水っぽい感がある。しかし、真鯛の味が落ちる頃が旬となる為、その時期は高値で売られている。	雨子（あまご）・四国から静岡県の伊豆半島までの上流河川に生息し、サケのように海に降りて再び戻ってくるものを「サツキマス」と呼んでおり、体色や体形はサケに類似しているが、海へ降りないものは黒っぽい楕円形の模様に鮮やかな朱色の斑点を持つ美しい体色をしている。同種に「ヤマメ」と言う魚が存在するが、これも海に降りるものを「サクラマス」と呼び、「サツキマス」同様サケに類似した体色と体形を持つ。（「桜鱒」の解説を参照）過去、サクラマスとサツキマスは別種とされてきたが、近年同種ということが判明し「サツキマス」及び「アマゴ」は、種としては「サクラマス」の仲間となる。四国では雨の魚と言う意味で、「あめご」と呼ぶ。焼いた石を使った「味噌焼き」が特に格別だが、香りはそれほど強くはないが、「アユ」同様に、塩焼きのうまさは最高のものである。最近は養殖ものが多く市場に流通している。旬は春から初夏にかけて。

素魚（しろうお）・体が半透明であることから「しろうお」と呼ばれているが、よく混同される「しらうお」とはまったくの別種の魚である。「しろうお」は、ハゼ科で「しらうお」は、しらうお科というサケの仲間である。北陸や山陰などで、「またいさぎ」の地方名を持つが、琵琶湖の「いさぎ」とはこれまた別種である。成長しても６ｃｍほどの小魚で、体は白っぽい半透明でうろこは無い。生きている時は、赤黄色がかった内臓と体節が見えるが、死ぬと白くなる。左右に平たい頭とハゼ科特有の吸盤状の腹びれを持っている。背びれは１つで中央より後方に付いているのが特徴。「踊り食い」が知られているが、これは死後急速に味が落ちる為で、活魚でないと商品価値が無い。弱い魚であるので酸素を注入した袋に詰められたまま輸送され、この状態で市場に並ぶ。産地で有名なのは福岡近郊の室見川で、旬は春で市場に出回るのは２月から５月にかけて。（素魚の踊り喰いはこちら）	鰤（ぶり）・成長するにつれて呼称が変わる「出世魚」なので、縁起が良い魚と言われ、地方によっては正月肴や祝儀肴として定着し現在に至っている。呼名は地方によって異なるが、関東では15㎝くらいまでの幼魚を「わかし」、40cm前後の2～3年魚を「いなだ」、60cm前後の4年魚を「わらさ」、それ以上を「ぶり」と呼ぶ。関西では、15cm以下を「わかな」、20cm前後を「つばす」40 cm前後を「はまち」、60cm前後を「めじろ」、それ以上を「ぶり」と呼ぶ。成魚の大型は約1mに達し、体重は10㎏を超え、背は暗緑色で、体側に黄色の縦縞が1本走っている。非常に見た目の似た魚で「ひらまさ」という魚がいるが、一番明確な見分け方は、上部写真の赤丸印の部分を見るとおり、「ぶり」の上あご主骨の後上角は角ばっているのに対して、「ひらまさ」のそれは丸みがある。（「平政」の解説を参照）（「間八」の解説を参照）体色やヒレ等でも見分けが付く場合もあるが、非常に微妙だが、身の味や食感については、どちらも美味だか全く異なる。脂がのるのは東京でいう「わらさ」より少し大きくなるくらいからで、成魚になると脂が十分にのって非常に美味しくなる。特に真冬に捕れるものは「寒ぶり」と呼ばれ、最高に味が良い。

間八（かんぱち）・「ぶり」や「ひらまさ」と同様の高級魚で見た目も非常に似ているが、頭から目の上にかけて（上写真）黒い帯状の模様があり、「ぶり」や「ひらまさ」に比べて体高があり、上あごが発達し、後端が目の下まであるので、案外見分けは用意である。（「鰤」の解説を参照）（「平政」の解説を参照）体長は１m以上に達するものもいるが、あまり大型のものは、食用としてはあまり向かない。世界中の温・熱帯域に棲息するフィッシュイーター（肉食魚）で、寿司・和食の世界ではなくてはならない魚である。天然物は季節を問わずに値段が高い為、早くから養殖され市場で見かけるほとんどが養殖ものである。養殖ものはやはり脂が多く、身も柔らかく、天然物とははっきりと区別することができる。関東では秋口に黒潮にのって「汐っ子」（しょっこ）と呼ばれる幼魚を季節ものとして食す習慣があったが、近年ではあまり見かけることが無い。釣人の間では人気の魚種で、伊豆半島や七島・九州などで盛んである。ルアー疑似バリを使ったり、「ムロアジ」を付けた泳がせ釣り等海の大物として格好のターゲットとなっている。刺身・焼き物・煮物・フライ等何でも美味しくいただける。旬は夏から秋にかけて。	飛魚（とびうお）・暖海性の魚で、文字どおり空中を飛ぶところからこの名があり、海上で２００m近く滑空するときもある。また、時には沖を走る船に飛び込んでくるものもある。とびうおの仲間は種類が多いが、食用としての主なものには「とびうお」・「はまとびうお」・「つくしとびうお」・「ほそとびうお」などがある。市場ではこれらは特に区別されてはいないが、東京市場では入荷の時期により、「春とび」・「夏とび」と呼び分けている。「春とび」は、２～３月頃から入荷する八丈島の「はまとびうお」を指し、特に出始めの地元の刺し網漁で揚がるものは最上とされ、初夏から出回る「とびうお」などの「夏とび」に比べると６～７倍の高値がつけられる。「とびうお」は、初夏から秋に出回り、旬は初秋。「はまとびうお」は、冬～春が旬。「つくしとびうお」は、初夏～秋に出回り、旬は初夏。「ほそとびうお」は、晩春～秋に出回り、旬は晩春。

鮎（あゆ）・富渓流に身を躍らせる美しい姿と、独特の香りと品の良い淡白な味、さらには北海道の石狩川から南の殆ど日本全国の河川に生息することもあり、一番代表的な日本の淡水魚となっている。釣りの世界でも、鮎の主食である藻を確保するために縄張りを持つ為、そこに侵入するアユを攻撃する習性を利用した友釣りが特に有名である秋に川で孵化した稚魚は海に降り、春に再び川を遡って中流域で成長し、秋になると下流に降りて産卵し、やがては短い一年の命を終える。このことから年魚（ねんぎょ）とも呼ばれるが、稀に雌に限り例外的に越冬するものがあり、これを「とまりあゆ」と呼んでいる。香魚（こうぎょ）と呼ばれるように、独特と香りが身上で、これを生かすには塩焼きが一番。「若鮎」は身の柔かさと淡白さを生かして「背越し」や「洗い」にする。「落ちあゆ」は、脂が抜け、皮も硬いので「魚田（ぎょでん）」や「煮浸し」などに向く。鮎の塩辛を「うるか」と呼び、内蔵・卵巣・精巣など様々あり、珍味として、また和え物などに良い。（天然鮎の塩焼きはこちら）	石垣鯛（いしがきだい）・「石鯛（イシダイ）」の仲間で、幻の魚として磯釣りの対象魚としてイシダイと共に非常に人気のある魚である。皮目にある黒い斑紋が石垣模様に見える為、この名が付いたとされ、家の石垣を造ると言う意味から釣れると縁起の良い魚とも言われている。市場に出回る量は少なく、稀に活魚が他の魚に混じって入荷する程度である。体形はイシダイ同様に著しく側偏し、体高が非常に高い。体の割りには口は小さく、くちばし状で多数の歯が層のように並び、ウニ・サザエ・ふじつぼ・等の底生または、付着性の動物や海藻等を割ったり噛み砕いて捕食する。黒褐色の斑紋が体全体にあり、口の部分は黒いが、雄の老成魚は非常に大型化し、体色もほぼ黒になり、口だけが白くなり、これを「口白（くちじろ）」と呼ぶ。雌は成魚になっても大型化はするが、体色は変化しない。市場に出回るものは５０㎝前後のものが多いが、磯釣りでは、８０㎝を超える大物も出現する。旬は夏。量は多くないが、晩春から秋にかけてが出回る時期。味は「イシダイ」より若干クセがあり、好みが分かれるところ。身は引き締まっていて食感が良い。（「石鯛」の解説を参照）

真鯵（まあじ）・日本で最も馴染みの深い魚と言っても過言ではない、誰でも知っている魚で、年間を通じて市場に出回る。水深の浅い運河や港内から、水深150メートルほどの深さの海まで日本全国に広く棲息している。アジ科の魚は紡錘形か体高が高い体形で、尾びれの手前に独立した2本のトゲがあり、側線上に「ぜいご」と呼ばれるトゲのある大型のうろこを持つ。また、非常に種類が多く、日本近海だけでも20種近く生息するが、通常「アジ」と言えば「真鯵」を指す。値は１㎏500円ほどのものから5000円を超えるものまで幅広く、捕獲方法や産地等によって変動する。上記写真は、「関あじ」と言われるもので、豊後水道の複雑で早い海流にもまれた地つきのものを釣り上げ、一定期間畜養し、締めて出荷する。値ははるが、型が大きく、身の締り、味、どれを取っても非常に美味である。しかし、市場などで偽物が横行しているので注意が必要。初夏から秋にかけてが旬であるが年間を通じて食すことができ、「たたき」・「刺身」・「干物」は勿論のこと、千葉の外房名物の切り身を青じそ、ネギ、しょうがにみそを加えて包丁で細かくたたく、「なめろう」は、酒肴にご飯に最高の一品となる。	白鱚（しろぎす）・前回の「鯵」と同様に馴染みの深い魚で、通常「きす」と言えばこの「しろぎす」を指す。「きす」の仲間は多いが、「しろぎす」が最も味が良く、釣りの世界でも「投げ釣り」の対象魚として親しまれている。同じ仲間の「あおぎす」は、「しろぎす」よりも明らかに大型で、体色が青味を帯びており綺麗な魚だが、味は臭みがあって劣る。但し、釣りの世界では干潟が激減していく昨今、九州方面の一部地域で稀に釣ることのできる幻の魚となっている。生息地は、北海道南部以南でほぼ日本全国の湾内の砂地に棲息している。体色は綺麗な真珠のような色で、体長は最大で30㎝ほど。一般的に出回るのは15～20ｃｍほどのもの。体形は円筒形で胸ビレが頭のすぐ後ろにあるのが特徴。肉質は白身で味は癖がなく淡白で非常に美味である。一番一般的なのは塩焼きで、皮目にやや香りがある。また、新鮮なものは刺身で繊細で爽やかな味わいを楽しむことができる。旬は初夏から夏にかけて。

青羽太（あおはた）・日本の近海には１００種類以上のハタの仲間が生息しており、「アオハタ」は本州中部以南の各地沿岸域のやや深い岩礁地域や砂泥地域に広く生息している。（「赤羽太」（あかはた）の解説を参照）（「雉羽太」（きじはた）の解説を参照）若魚は、磯場や堤防などの意外と岸近くの浅場でも捕獲されることがある。体色は黄褐色で、６条の幅広い暗色横帯があり、黄色の小さな斑点が多数散在する。また、大きな特徴としては、尾びれの後縁が黄色い。体長は20cm～40cmと、ハタの仲間としては小型のものが多いが、成魚は90cmほどまで成長する。食性は、甲殻類や小型の魚を捕食する。ハタの仲間としては、市場では意外と入荷の多く、主に日本海側から入荷する。白身の上品な味で、脂も甘味もあって他の高級ハタ類に負けない味である。刺身は勿論、蒸し物、ムニエル、グリル、煮つけ等にも向く。旬は夏.。	赤連子（あかれんこ）・通称「れんこだい」と呼ばれ、「きだい」にやや似ており、その代用として鮮魚・冷凍もので出回っている。２００カイリ規制が始まってから一時急に大量に市場に出回った魚だが、かなり以前より市場には時々出回っており、当時は「きだい」と区別されずに扱われることが多かったようである。体長は30㎝ぐらいまで成長し、タイ科特有の美しい体色と体形をしている。「きだい」に多少似ているものの、体色は全体的に赤みが強く、胸びれのつけ根の内側が濃黄色をしているので「きだい」と判別することはそれほど難しくはない。小笠原等で釣りによる捕獲が多いので、東京市場には鮮度も姿も良いものが入荷する。塩焼きが美味で特に皮目の香りは非常に良い。

白曹以（しろそい）・「カサゴ」、「メヌケ」、「メバル」と同じフサカサゴ科の魚で、外見も「カサゴ」などに非常に良く似ている。上の写真は「シロソイ」だが、他にも「マソイ」、「クロソイ」、「シマソイ」、「ムラソイ」等の近種が存在する。市場に出る量は、一般的に少ないが、沖の根魚釣りとして非常に人気があり、味の良い白身魚として知られる。「ソイ」は卵胎生の魚で、稚魚を生む春から初夏にかけてが旬。通年捕ることができるが、秋から冬でも脂がのって非常に美味である。刺し網やはえ網で多少は捕獲されるものの、海中の根周りに生息するため捕獲量は非常に少なく、もっぱら釣りの対象となっている。	真鯖（まさば）・毎年100万トン以上の水揚げがある多獲魚で、古くから日本人に馴染みの深い大衆魚の一つである。「鯖の生き腐れ」と言われるほど傷みが早く、すぐに身が柔らかくなってしまう。これは、鯖自体が持つ分解酵素が強く、自身で消化してしまう為で、普通は塩や酢で〆たり、すぐに調理して腐敗を防ぐ。鯖を食べると蕁麻疹が出る人が意外に多いが、これも鮮度と大きく関係している。一般的に、青い魚は「ヒスチジン」と言う物質が多く身に含まれており、魚が死ぬと細菌の作用でこれが「ヒスタミン」に変化し、アレルギー症状を起こす。例えば、黒鯛（クロダイ）と比較して鯖の持つ「ヒスチジン」の量は、約100倍にもなる。市場に出回るのは、３０～４０cmの大きさのものが多く、脂ののったものは特に美味で、代表的は青背の赤身魚である。通常エサの多い近海に生息し、産卵が終わる頃から猛烈な食欲を示し始め、秋から冬にかけて脂がのってくる。これが俗に言う「秋鯖」である。（〆鯖はこちら）

秋刀魚（さんま）・「秋刀魚」と書いて「さんま」と読ませるのは、その姿形と季節を魚にピタリと表現した当て字である。「さんま」とは元々、大きな群れと言う意味の”沢”の字と魚を意味する”ま”の字とを結びつけた群魚と言う意味で「さわんま」と呼ばれていた。秋から獲れ始め、普通は年内に取れたものは「新さんま」と呼ばれる。年を越してからのものは冷凍されて市場に通年出回るが、かつては大量に捕れたものを保存する方法が各地で工夫されていた。長野の「塩さんま」や岐阜のさんまとまつたけを炊き込んだ「茶飯」などがそれにあたり、加工保存して内陸に運んだものと思われる。体が細く、背びれ・腹びれ・尾びれが後方にまとまって付いており、背中は青黒く、腹部は銀白色で金属のような光沢があり、また体長が３５㎝～４０cmと「短刀」に似ている為、九寸五分（匕首：あいくち）という物騒な異名を持っている。鮮度の良いものは、上部写真のように下あごの先端が黄色く、しっぽを持って頭を下に向けるとまさに刀のようである。	鱧（はも）・「はも」は、古語の食む（はむ）・咬む（かむ）からきている。確かにその生命は強く、切り落とされた頭部だけになっても咬みつくとさえ言われ、少しでも水分があればかなりの長時間生き続けることができる。海の中でも猛魚ぶりを発揮し、エビ・カニやイカ・タコから小魚まで食べる典型的な肉食性の魚である。体形は細長く、「うなぎ」や「うつぼ」に似ている。鋭く尖った歯が数列生えており、口は完全には閉じられず、いつも大きく開いたままになっている。深さ５０～６０mの岩礁やサンゴ礁近くの砂泥の中に生息し、背は淡い褐色で全身に強いぬめりがあり体長は約２m程まで成長する大型の円筒魚である。身は、白身で味は淡白で、非常に美味だが小骨が多く、皮の際まで伸びているので必ず「骨切り」をしなければならない。関西では家庭料理にも使うほどなじみが深く、特に京都では古くから好まれており、代表的な夏の味の一つである。

伊佐木（いさき）・夏を代表する魚といえば、まず第一に「鱸（すずき）」があげられるが、「すずき」が高級魚であるのに対して、大衆魚の代表格ともいえるのがこの「いさき」である。日本の本州中部以南から遠くは南シナ海まで生息する暖海性の魚で、海藻の多い岩礁地帯に多く住んでいる。夏磯の釣りのターゲットとしても人気がある。ひれの棘と骨が非常に硬くて鋭く、食べている際にのどに刺さると大変な目に合う。しかし、味は癖のない淡白な味で、磯魚特有の香りが少しある。大型のものは刺身にすると甘味も多く、特に美味。	河豚（ふぐ）・日本でふぐを食べ始めたのは縄文時代だが、中毒死する人が多かった為に、江戸時代には禁止令が出された事さえあり、明治２５年には法律による取り締り規制が行われている。現在では毒を持つ部位やその毒性がほとんど解明されているが、取り扱いについては、食品衛生法を中心に細かく規制され、残滓（ざんし）の処理も厳重に管理される。ふぐの仲間で主に食されるものとしては、マフグ・ショウサイフグシマフグ・ゴマフグ・トラフグあたりが有名。マフグとショウサイフグは非常に似ており、北海道などから大量に入荷し、安いふぐ料理は大体これである。皮に強い毒を持ったものが多いが、シマフグとトラフグは唯一皮も食べられる。上記写真は、ふぐの中でも最高級品とされる「とらふぐ」で、大型で体長７０㎝ほどにもなる。体の上半分は暗褐色で虎のような黒い模様があり、胸ビレの後に大きな黒い紋があるのが特徴。性質は非常に荒く、時には共食いすることもあるほど。しかし、身は透明感のある白身で生臭みはなく非常に美味。（河豚刺し小皿はこちら）（河豚刺し大皿はこちら）

笠子（かさご）・北海道南部以南から東シナ海までの浅めの岩礁地帯を中心に広く生息している。本種の仲間はとても多く、「××カサゴ」といった名の種類が数多く存在するが、また見極めも結構難しい。（「鬼笠子」の解説を参照）呼名も地方によって違い、九州では「アラカブ」・近畿四国では「ガシラ」と呼ぶ。出張などで料理店に入った時に覚えておくと便利である。日本人には結構馴染みのある根魚で市場には年間を通して入荷するが高価である。味が良く高価な魚なので、釣り人にも人気があり、岩礁を見つけて探る船釣りは勿論、堤防周辺の根周りやテトラポッドの隙間など、障害物を狙うと意外と簡単に釣ることができる。「カサゴ」は卵胎生なので産卵期の初春に釣ると、お腹に小さな子供を身ごもっている。皮を付けたままの刺身が最高に美味で、他には「ぶつ切り」にした身を使った「みそ汁」も濃厚な味で最高。煮つけや小振りなものは唐揚げでも美味しい。	鱸（すずき）・日本各地の湾内に多く生息し、淡水の川にも遡上する。場所は、真水と海水が入り混ざった河口域などに多く見られる。東京湾などの湾奥、東京湾に繋がる河川や京浜地帯の運河等にも多く生息し、釣りの世界では最近はシーバスと呼ばれ、ルアーフィッシングの対象魚としても人気がある。（「平鱸」ひらすずきの解説を参照）夏魚の代表格で良質の白身魚として高値で取り扱われ、東京市場では、両国の川開きの時期に特に値が高くなると言われる。特に関東近県の内湾や河川で捕れたものは、時期や場所によって臭みがあるが、氷で強めに締めれば全く臭みを感じなくなる。夏の「スズキの洗い」は夏には欠かすことのできない一品だが、最も寒くなる２～３月の大型は特に美味で、香り・食感・味、共に絶品である。活け物の刺身は勿論、ポワレやムニエルも非常に良く合い、最近では和食店よりもフレンチ・イタリアンレストランへの出荷が多いようである。「すずき」は「ぶり」等と同様に成長時期によって呼び名が変わる出世魚とよばれ、一般に２５ｃｍ前後の一年魚を「せいご」と呼び、３０ｃｍ～６０ｃｍぐらいまでを「ふっこ」、それ以上を「すずき」というように呼び分ける。また、さらに５～６ｃｍのものを「こっぱ」とも言うようである。（「あら」の解説を参照）