席を彩るお料理の主役達・食材ご紹介

甲殻類　Vol.01


茨蟹（いばらがに）・正式な和名は、「蝦夷茨蟹」という。「鱈場蟹」と、「花咲蟹」の丁度中間のような見た目を持つ。タラバガニ科なので、分類学的にみるとカニ類ではなく、やどかりに近い種類。しかし、一般的には形が似ているので、蟹として扱われる。（「鱈場蟹」の解説を参照）徳島県以北に分布するが、水揚げは少なく、北海道では非常に珍品として扱われている。駿河湾では比較的たくさん採れ焼津などでは漁師だけが食しており、香りとその味から、「ミルク蟹」といわれている。通常市場には出回るものではないが、値段はタラバガニに比べるとだいぶ安い。	白海老（しろえび）・富山県や石川県方面で有名な「白海老」（しらえび）は「オキエビ科」。「しろえび」は「エビジャコ科」でまったくの別種で、標準和名は、「フタトゲエビジャコ」という奇妙な名前。普通の海老の仲間に見えるが、よく見ると目の位置や脚数、脚の形状等、相違点が色々とある。当店では始めて入荷したが、市場でも他の海産物に混ざる程度らしく、極めて稀な品種である。また、「フタトゲエビジャコ」には複数の種が混在するようで、大平洋沿岸に生息するものと、オホーツク・日本海に生息するものとは別種であることは間違いないらしい。しかし、ベーリング海から北米西岸にかけて生息している種との関係はまだ不確定である為、同種の研究が進むと、標準和名や学名が変更される可能性もあり、まだ数多くの謎を秘めた種である。味は他種のエビジャコと同じくとても美味で、茹でエビ・唐揚げなどで食すが、まだ研究の余地がありそうである。当店では、京都より活けものを仕入たものを刺身にしたが、「あまえび」や「ぼたんえび」より甘味があり、とても美味しいものであった。

渡蟹（わたりがに）・正式には「ガザミ」という種の総称として「ワタリガニ」と呼ばれている。本州・四国・九州各地の内湾の砂泥地に生息し、各地で周年に渡って小型の底引き網で捕獲されるので、市場に出回る量が多く、日本全国でカニ料理として最も広く使われている。今でこそタラバガニやズワイガニが家庭の食卓でも食べられるようになったが、昔最も多かった食用のカニは同種であった。昔は、東京でカニと言うとこの「ガザミ」のことを指し、戦前から戦後にかけて、品川から大森あたりの海沿いにこの「ワタリガニ」を出す料理屋が多く存在したようだ。天然資源を補う為、放流も行われ、また出荷調整の為の蓄養も盛んで、市場には活けで入荷する。また、輸入ものも多く、値段は高めだが値は安定している。甲羅は横長の菱形で、幅は２５cm程に達し、最後の歩脚が遊泳脚に変形しており、すばやく泳ぐことができる。旬は秋で他のカニにはない滑らかな肉質と、濃厚な「みそ」の旨味が絶品である。	松葉蟹（まつばがに）・正式和名は、「ズワイガニ」。山陰では「松葉がに」、北陸では「越前がに」と呼ばれている。日本海の冬の味覚としてよく知られているが、東京や大阪では「松葉がに」や「越前がに」の名の方が通りは良い。普通、「ずわいがに」と言うと雄だけを指し、雌は「こうばく」・「せいこ」・「せこ」・「めがに」などと呼ばれる。甲幅は15㎝に達し、歩脚は長くて可食部が多い。北海道の「毛蟹」と並んで、冬の美味の双璧をなし、生きたものをゆでて二杯酢などで食べるのが最高である。他に、かに鍋や足の肉をむき身にして刺身で食べても美味なことこの上ない。近年特に高級化して、「活け」はもとより「姿」のものは極めて高価でいささか「高値の花」の感がある。同種に「ベニズワイガニ」と言う種類が存在するが、その名のとおり姿は「ずわいがに」にそっくりだが鮮やかな赤褐色をしている。「ずわいがに」よりも深い場所に生息し、「ずわいがに」の減少とともに漁獲されるようになってきたが、肉質はあまり良くなく、市場価値はそれほど高くない。（「勢子蟹」の解説を参照）

車海老（くるまえび）・えびの仲間の代表格で、日本の近海だけではなく、インド洋まで広く分布しているが、近年はスエズ運河から地中海に入りシリア沿岸などでも重要種になりつつあるという。腹部を曲げたときの幅広い濃褐色の縞模様が車輪を思わせるところからこの名がある。味はえびの中でも最上で、高級品である。江戸前で捕れた天然物は別格として非常に値が高いが、それ以外の天然物よりも養殖物の方が値段が高い場合が多い。えびの養殖はこの「車海老」が最初と言われているが、やはり養殖技術に非常に手間がかかるということであろう。体長９cmくらいまでを「才巻」と呼び、９cm～１２cmくらいまでの生後８～１０ヶ月のものを「巻」、あるいは「巻えび」と呼び分け、１２cm～２０cmくらいのものを「車えび」、それ以上のものを「大車」と言うように区別して扱われる。「車海老」の天然は産卵期が４月～１０月といわれているが、えびの仲間全体としての旬は特にない。（「葦海老」よしえびの解説を参照）	伊勢海老（いせえび）・浅海の岩礁地帯に生息するが、紀伊半島東岸に特に多かった為「伊勢海老」と呼ばれるようになったという。味の良さは勿論、大型種が姿の良いところが珍重され、トゲの生えた硬い甲が「武勇」の、また曲がった腹部が「長寿」の象徴とされて昔から祝い事や正月には欠かせないものとされてきた。形態的には、歩行型のエビ類の代表で、歩脚がしっかりとしている。昼間は岩陰に潜んでいるが、夜になると貝などを求めて出歩く夜行性で、それを狙って刺し網をかけるのが一般的な捕獲の方法である。料理には活けを使うので、市場にも殆ど生きた状態で出回り、その為値段も相当に高く、エビ類の中でも桁違いの高級品とされている。（「団扇海老」うちわえびの解説を参照）

上海蟹（しゃんはいがに）・正式名称は「シナモクズガニ」。 9月～11月にかけて、中国の頃蘇州近郊の陽澄湖や無錫太湖で採れるものが、特に上海蟹と呼ばれている。市場では秋になると、この蟹を入れたタケカゴが並ぶ。需要が高い為、中国では大量に養殖され、また大量に輸入されるが、出荷時期と量は制限されおり、最近のニセモノ騒動はご承知の通りである。また、高値で取引されているが、最近過剰養殖の為、値段が安くなってきているようである。ほとんどが養殖物で、国産のモクズガニよりも小型で、甲羅の縁の刺の数と形等で判別できる。一般的には「蒸蟹」という食べ方が有名で、生きている時は、上写真のように青っぽいが、蒸しあがると鮮やかな琥珀色へと変化する。（写真左側上下が雄で右２つが雌）身は少なめで多少物足りなさはあるが、この蟹の醍醐味は、「カニみそ」の味にあると言っても過言ではない。日本の蟹と比べると味的には強烈なインパクトがあるわけでは無いが、蒸すだけの単純な料理方法で晩秋になるにつれて味わい深くなってくる。	鱈場蟹（たらばがに）・近種に、「花咲蟹（はなさきがに）」や「茨蟹（いばらがに）と言った仲間がおり、見た目は似ているが微妙に違う。（「茨蟹」の解説を参照）日本海から北太平洋の水温の低い場所に生息しており、「タラ」の漁場と重なるところからこの名がある。甲幅約２５㎝、特に雄は足を広げると１mを超えるものもあり、比較的大型種とされている。身はやや淡白で美味で、市場には活けの他、茹でた足やはさみの部分が束にされて出回るが、捕獲された多くは茹でて缶詰になる場合が多い。また、冷凍物がアラスカなどから多く輸入されている。近年は、日本漁船の禁漁区が広がり、漁獲量は激減しているが、海外からの輸入ものも含めると、現在も「カニ缶」の約２割を占め、最高級とされている。

赤座海老（あかざえび）・食材としての認知は日本ではまだ低く、生息域も太平洋沿岸千葉県の房総沖から宮崎県の日向灘あたりではないかとされる。また、非常に深い場所に生息し、通常深さ２００～４００ｍの深海に生息している。特に有名産地は、駿河湾、相模湾、東京湾、房総沖などから入荷するが、市場にはまず出回ることはない。関東では、資源管理のために５月中旬～９月中旬までの産卵期は漁を禁じられているようで、産地でも漁獲量が極端に少なく、「幻のエビ」とまで言われている。本種を「手長エビ」としている飲食店も多いがそれは間違いで、「手長エビ」は淡水種として別に存在する。また、姿は「手長エビ」に似ているが、アカザエビ科という単独種で、どちらかと言うとザリガニに近い種とされる。身は非常に柔らかく、また甘味・旨みが非常に高く、エビの王様と言われる「伊勢海老」よりも味は上と言われている。フレンチやイタリアン料理には非常にポピュラーに用いられており、フランスでは「ラングスチーヌ」、イタリアでは「スカンピ」と呼ばれている。生は勿論絶品だが、焼いても軽くグリルしても非常に美味。	団扇海老（うちわえび）・房総から九州・沖縄・東シナ海までの水深50ｍ～300ｍの砂泥底に広く生息しており、特に九州地方ではポピュラーな存在だが、関東市場では高価な食材として扱われている。その名の通り団扇のような形をしており、海老の仲間としては非常に特殊な体形をしている。また、履物の「せった」に似ているので、「雪駄」と呼ばれたり、胴と頭を激しく動かしてパチパチと音を立てて威嚇する所から、「パッチンエビ」などと呼ばれている。体長は15ｃｍ程で、「伊勢海老」に近いセミエビ科で、価格は「伊勢海老」の1/3以下だが、刺身にした場合、味も見た目も「伊勢海老」に非常に良く似ている。近種に、「オオバウチワエビ」と「ウチワエビモドキ」と言う２種が存在するが、「ウチワエビ」の頭胸甲の後半部の縁に11～12 個の棘と全体的に棘や毛が多い所に比べると、「オオバウチワエビ」の縁の棘は７個で、「ウチワエビモドキ」については体の縁に棘が無い所から容易に判別がつく。刺身は勿論、茹でても旨味・甘味共に多く、非常に美味。（「伊勢海老」の解説を参照）

葦海老（よしえび）・大阪湾や伊勢湾その他西日本の内湾を中心に、三河湾などが主な産地。市場には殆ど出荷されず、漁獲した地元で消費される事が多いようである。クルマエビ科のエビで、体長は15～20cmで、体色は淡褐色もしくは黄褐色で、黒褐色の細かい斑点がある。稚期は河口域の葦などの密集している干潟等で生活している所からこの名前があるようで、、成長とともに沖合に移動するが、基本的には内湾に留まるようである。活けの物をお刺身で食べると非常に美味で、「伊勢海老」や「車海老」よりも甘味が強く、市場に入荷した場合は、非常に価値が高い。刺身の他、天ぷら・かき揚げや茹でえびでも甘味・旨味は絶品である。（「車海老」の解説を参照）	棘藻海老（いばらもえび）・大殻が棘だらけで怖い顔つきから一般的には「鬼エビ」と呼ばれ、体長は10cm強でエビの仲間としては比較的大型で、山陰沖から北海道にかけての水深300m程の深海に生息している。水揚げは少なく不安定で、市場には殆ど出回る事は無く、島根・鳥取・北海道では特に珍重され、値段の高い幻のエビで、一般的には滅多にお目にかかる事はできない。味は非常に甘く、旨味も高く、適度の硬さがあり、食感も楽しむ事もできる最上級のもの。刺身は勿論、贅沢にみそ汁でも非常に美味。特に火を加えると味の濃度が増すので、塩焼きでも楽しめる。味噌の部分は、特に甘みが強く、こちらも火を通すと、高級なチーズのような風味が広がる。味は大型の「ボタンエビ」に近いが、いずれにしても、他のエビとは比べ物にはならない程の旨さを堪能する事ができる。

勢子蟹（せこがに）・その他、「せいこがに」・「めがに」・「香箱（こうばこ）がに」などと呼ばれる非常に希少価値の高い蟹で、「ずわい蟹」の雌をさす。雄同様、解禁日の１１月６日から水揚げされるが、資源保護にて禁漁期間が厳しく、翌年１月１０日頃以降は禁漁期間となる。雄よりも体長が大分小さいので、身は少ないものの、甘み・旨味共に素晴らしい。また、最大の魅力は、体内にある卵巣「内子」（うちこ）と、お腹の房にある卵「外子」（そとこ）にある。外子はプチプチとした食感がウリだが、黒色に近くなった物は、解禁直後のものに比べると食感が落ちる。内子は鮮やかなオレンジ色で、こちらも歯応えが有り、非常に濃厚な味で、絶品。（「ずわい蟹」の解説を参照）	北国赤海老（ほっこくあかえび）・一般的には「甘海老」（あまえび）の名で市場で流通しており、正式な標準和名を知る人は少ない。日本海及び北海道・ベーリング海の水深３００m以上の深海に主に生息しており、アラスカやカナダ産もあるが、国産物は希少価値が高い。生まれて約５・６年全て雄として成長し、交尾時期より雌に性転換する。性転換直前の雄が一番味が良いとされるが、通常市場に出回る１０cmを超える大型は全て雌である。非常に甘みが強く、寿司種・刺身は勿論、唐揚げや味噌汁でも美味しく戴ける。活けよりも１日置いた方が甘みが出るようである。


茨蟹（いばらがに）・正式な和名は、「蝦夷茨蟹」という。「鱈場蟹」と、「花咲蟹」の丁度中間のような見た目を持つ。タラバガニ科なので、分類学的にみるとカニ類ではなく、やどかりに近い種類。しかし、一般的には形が似ているので、蟹として扱われる。（「鱈場蟹」の解説を参照）徳島県以北に分布するが、水揚げは少なく、北海道では非常に珍品として扱われている。駿河湾では比較的たくさん採れ焼津などでは漁師だけが食しており、香りとその味から、「ミルク蟹」といわれている。通常市場には出回るものではないが、値段はタラバガニに比べるとだいぶ安い。	白海老（しろえび）・富山県や石川県方面で有名な「白海老」（しらえび）は「オキエビ科」。「しろえび」は「エビジャコ科」でまったくの別種で、標準和名は、「フタトゲエビジャコ」という奇妙な名前。普通の海老の仲間に見えるが、よく見ると目の位置や脚数、脚の形状等、相違点が色々とある。当店では始めて入荷したが、市場でも他の海産物に混ざる程度らしく、極めて稀な品種である。また、「フタトゲエビジャコ」には複数の種が混在するようで、大平洋沿岸に生息するものと、オホーツク・日本海に生息するものとは別種であることは間違いないらしい。しかし、ベーリング海から北米西岸にかけて生息している種との関係はまだ不確定である為、同種の研究が進むと、標準和名や学名が変更される可能性もあり、まだ数多くの謎を秘めた種である。味は他種のエビジャコと同じくとても美味で、茹でエビ・唐揚げなどで食すが、まだ研究の余地がありそうである。当店では、京都より活けものを仕入たものを刺身にしたが、「あまえび」や「ぼたんえび」より甘味があり、とても美味しいものであった。

渡蟹（わたりがに）・正式には「ガザミ」という種の総称として「ワタリガニ」と呼ばれている。本州・四国・九州各地の内湾の砂泥地に生息し、各地で周年に渡って小型の底引き網で捕獲されるので、市場に出回る量が多く、日本全国でカニ料理として最も広く使われている。今でこそタラバガニやズワイガニが家庭の食卓でも食べられるようになったが、昔最も多かった食用のカニは同種であった。昔は、東京でカニと言うとこの「ガザミ」のことを指し、戦前から戦後にかけて、品川から大森あたりの海沿いにこの「ワタリガニ」を出す料理屋が多く存在したようだ。天然資源を補う為、放流も行われ、また出荷調整の為の蓄養も盛んで、市場には活けで入荷する。また、輸入ものも多く、値段は高めだが値は安定している。甲羅は横長の菱形で、幅は２５cm程に達し、最後の歩脚が遊泳脚に変形しており、すばやく泳ぐことができる。旬は秋で他のカニにはない滑らかな肉質と、濃厚な「みそ」の旨味が絶品である。	松葉蟹（まつばがに）・正式和名は、「ズワイガニ」。山陰では「松葉がに」、北陸では「越前がに」と呼ばれている。日本海の冬の味覚としてよく知られているが、東京や大阪では「松葉がに」や「越前がに」の名の方が通りは良い。普通、「ずわいがに」と言うと雄だけを指し、雌は「こうばく」・「せいこ」・「せこ」・「めがに」などと呼ばれる。甲幅は15㎝に達し、歩脚は長くて可食部が多い。北海道の「毛蟹」と並んで、冬の美味の双璧をなし、生きたものをゆでて二杯酢などで食べるのが最高である。他に、かに鍋や足の肉をむき身にして刺身で食べても美味なことこの上ない。近年特に高級化して、「活け」はもとより「姿」のものは極めて高価でいささか「高値の花」の感がある。同種に「ベニズワイガニ」と言う種類が存在するが、その名のとおり姿は「ずわいがに」にそっくりだが鮮やかな赤褐色をしている。「ずわいがに」よりも深い場所に生息し、「ずわいがに」の減少とともに漁獲されるようになってきたが、肉質はあまり良くなく、市場価値はそれほど高くない。（「勢子蟹」の解説を参照）

車海老（くるまえび）・えびの仲間の代表格で、日本の近海だけではなく、インド洋まで広く分布しているが、近年はスエズ運河から地中海に入りシリア沿岸などでも重要種になりつつあるという。腹部を曲げたときの幅広い濃褐色の縞模様が車輪を思わせるところからこの名がある。味はえびの中でも最上で、高級品である。江戸前で捕れた天然物は別格として非常に値が高いが、それ以外の天然物よりも養殖物の方が値段が高い場合が多い。えびの養殖はこの「車海老」が最初と言われているが、やはり養殖技術に非常に手間がかかるということであろう。体長９cmくらいまでを「才巻」と呼び、９cm～１２cmくらいまでの生後８～１０ヶ月のものを「巻」、あるいは「巻えび」と呼び分け、１２cm～２０cmくらいのものを「車えび」、それ以上のものを「大車」と言うように区別して扱われる。「車海老」の天然は産卵期が４月～１０月といわれているが、えびの仲間全体としての旬は特にない。（「葦海老」よしえびの解説を参照）	伊勢海老（いせえび）・浅海の岩礁地帯に生息するが、紀伊半島東岸に特に多かった為「伊勢海老」と呼ばれるようになったという。味の良さは勿論、大型種が姿の良いところが珍重され、トゲの生えた硬い甲が「武勇」の、また曲がった腹部が「長寿」の象徴とされて昔から祝い事や正月には欠かせないものとされてきた。形態的には、歩行型のエビ類の代表で、歩脚がしっかりとしている。昼間は岩陰に潜んでいるが、夜になると貝などを求めて出歩く夜行性で、それを狙って刺し網をかけるのが一般的な捕獲の方法である。料理には活けを使うので、市場にも殆ど生きた状態で出回り、その為値段も相当に高く、エビ類の中でも桁違いの高級品とされている。（「団扇海老」うちわえびの解説を参照）

上海蟹（しゃんはいがに）・正式名称は「シナモクズガニ」。 9月～11月にかけて、中国の頃蘇州近郊の陽澄湖や無錫太湖で採れるものが、特に上海蟹と呼ばれている。市場では秋になると、この蟹を入れたタケカゴが並ぶ。需要が高い為、中国では大量に養殖され、また大量に輸入されるが、出荷時期と量は制限されおり、最近のニセモノ騒動はご承知の通りである。また、高値で取引されているが、最近過剰養殖の為、値段が安くなってきているようである。ほとんどが養殖物で、国産のモクズガニよりも小型で、甲羅の縁の刺の数と形等で判別できる。一般的には「蒸蟹」という食べ方が有名で、生きている時は、上写真のように青っぽいが、蒸しあがると鮮やかな琥珀色へと変化する。（写真左側上下が雄で右２つが雌）身は少なめで多少物足りなさはあるが、この蟹の醍醐味は、「カニみそ」の味にあると言っても過言ではない。日本の蟹と比べると味的には強烈なインパクトがあるわけでは無いが、蒸すだけの単純な料理方法で晩秋になるにつれて味わい深くなってくる。	鱈場蟹（たらばがに）・近種に、「花咲蟹（はなさきがに）」や「茨蟹（いばらがに）と言った仲間がおり、見た目は似ているが微妙に違う。（「茨蟹」の解説を参照）日本海から北太平洋の水温の低い場所に生息しており、「タラ」の漁場と重なるところからこの名がある。甲幅約２５㎝、特に雄は足を広げると１mを超えるものもあり、比較的大型種とされている。身はやや淡白で美味で、市場には活けの他、茹でた足やはさみの部分が束にされて出回るが、捕獲された多くは茹でて缶詰になる場合が多い。また、冷凍物がアラスカなどから多く輸入されている。近年は、日本漁船の禁漁区が広がり、漁獲量は激減しているが、海外からの輸入ものも含めると、現在も「カニ缶」の約２割を占め、最高級とされている。

赤座海老（あかざえび）・食材としての認知は日本ではまだ低く、生息域も太平洋沿岸千葉県の房総沖から宮崎県の日向灘あたりではないかとされる。また、非常に深い場所に生息し、通常深さ２００～４００ｍの深海に生息している。特に有名産地は、駿河湾、相模湾、東京湾、房総沖などから入荷するが、市場にはまず出回ることはない。関東では、資源管理のために５月中旬～９月中旬までの産卵期は漁を禁じられているようで、産地でも漁獲量が極端に少なく、「幻のエビ」とまで言われている。本種を「手長エビ」としている飲食店も多いがそれは間違いで、「手長エビ」は淡水種として別に存在する。また、姿は「手長エビ」に似ているが、アカザエビ科という単独種で、どちらかと言うとザリガニに近い種とされる。身は非常に柔らかく、また甘味・旨みが非常に高く、エビの王様と言われる「伊勢海老」よりも味は上と言われている。フレンチやイタリアン料理には非常にポピュラーに用いられており、フランスでは「ラングスチーヌ」、イタリアでは「スカンピ」と呼ばれている。生は勿論絶品だが、焼いても軽くグリルしても非常に美味。	団扇海老（うちわえび）・房総から九州・沖縄・東シナ海までの水深50ｍ～300ｍの砂泥底に広く生息しており、特に九州地方ではポピュラーな存在だが、関東市場では高価な食材として扱われている。その名の通り団扇のような形をしており、海老の仲間としては非常に特殊な体形をしている。また、履物の「せった」に似ているので、「雪駄」と呼ばれたり、胴と頭を激しく動かしてパチパチと音を立てて威嚇する所から、「パッチンエビ」などと呼ばれている。体長は15ｃｍ程で、「伊勢海老」に近いセミエビ科で、価格は「伊勢海老」の1/3以下だが、刺身にした場合、味も見た目も「伊勢海老」に非常に良く似ている。近種に、「オオバウチワエビ」と「ウチワエビモドキ」と言う２種が存在するが、「ウチワエビ」の頭胸甲の後半部の縁に11～12 個の棘と全体的に棘や毛が多い所に比べると、「オオバウチワエビ」の縁の棘は７個で、「ウチワエビモドキ」については体の縁に棘が無い所から容易に判別がつく。刺身は勿論、茹でても旨味・甘味共に多く、非常に美味。（「伊勢海老」の解説を参照）

葦海老（よしえび）・大阪湾や伊勢湾その他西日本の内湾を中心に、三河湾などが主な産地。市場には殆ど出荷されず、漁獲した地元で消費される事が多いようである。クルマエビ科のエビで、体長は15～20cmで、体色は淡褐色もしくは黄褐色で、黒褐色の細かい斑点がある。稚期は河口域の葦などの密集している干潟等で生活している所からこの名前があるようで、、成長とともに沖合に移動するが、基本的には内湾に留まるようである。活けの物をお刺身で食べると非常に美味で、「伊勢海老」や「車海老」よりも甘味が強く、市場に入荷した場合は、非常に価値が高い。刺身の他、天ぷら・かき揚げや茹でえびでも甘味・旨味は絶品である。（「車海老」の解説を参照）	棘藻海老（いばらもえび）・大殻が棘だらけで怖い顔つきから一般的には「鬼エビ」と呼ばれ、体長は10cm強でエビの仲間としては比較的大型で、山陰沖から北海道にかけての水深300m程の深海に生息している。水揚げは少なく不安定で、市場には殆ど出回る事は無く、島根・鳥取・北海道では特に珍重され、値段の高い幻のエビで、一般的には滅多にお目にかかる事はできない。味は非常に甘く、旨味も高く、適度の硬さがあり、食感も楽しむ事もできる最上級のもの。刺身は勿論、贅沢にみそ汁でも非常に美味。特に火を加えると味の濃度が増すので、塩焼きでも楽しめる。味噌の部分は、特に甘みが強く、こちらも火を通すと、高級なチーズのような風味が広がる。味は大型の「ボタンエビ」に近いが、いずれにしても、他のエビとは比べ物にはならない程の旨さを堪能する事ができる。

勢子蟹（せこがに）・その他、「せいこがに」・「めがに」・「香箱（こうばこ）がに」などと呼ばれる非常に希少価値の高い蟹で、「ずわい蟹」の雌をさす。雄同様、解禁日の１１月６日から水揚げされるが、資源保護にて禁漁期間が厳しく、翌年１月１０日頃以降は禁漁期間となる。雄よりも体長が大分小さいので、身は少ないものの、甘み・旨味共に素晴らしい。また、最大の魅力は、体内にある卵巣「内子」（うちこ）と、お腹の房にある卵「外子」（そとこ）にある。外子はプチプチとした食感がウリだが、黒色に近くなった物は、解禁直後のものに比べると食感が落ちる。内子は鮮やかなオレンジ色で、こちらも歯応えが有り、非常に濃厚な味で、絶品。（「ずわい蟹」の解説を参照）	北国赤海老（ほっこくあかえび）・一般的には「甘海老」（あまえび）の名で市場で流通しており、正式な標準和名を知る人は少ない。日本海及び北海道・ベーリング海の水深３００m以上の深海に主に生息しており、アラスカやカナダ産もあるが、国産物は希少価値が高い。生まれて約５・６年全て雄として成長し、交尾時期より雌に性転換する。性転換直前の雄が一番味が良いとされるが、通常市場に出回る１０cmを超える大型は全て雌である。非常に甘みが強く、寿司種・刺身は勿論、唐揚げや味噌汁でも美味しく戴ける。活けよりも１日置いた方が甘みが出るようである。